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データを利用するバレーボーラーたれ。(6/6)

リガーレ仙台の元監督、雑賀雄太さんの最終稿。データ・バレーステーションを使ってどう思ったのかを書いてくださりました。

監督として初めて一シーズンをアナリストと共に、そしてバレーステーションプロを駆使して、データ分析という未知の世界に挑戦してきました。振り返ってみれば、本当に試行錯誤の連続であったというのが正直な感想です。

さて、連載最後となる本稿では私の考えるデータ分析との付き合い方について私なりの持論を述べてみたいと思っています。

まず、結論から言うと、本稿のテーマの通りです。

データを利用するバレーボーラーたれ。

この約半年間、初めてデータ分析という触れ、試行錯誤してきた今最も強く感じていることを集約した言葉が上記となります。

データに支配されてはいけないという戒め

データ分析に費やす時間が長くなればなるほど、データ分析ができるようになってきたと感じるようになればなるほど、少なからずデータに自分の思考を支配されそうになっている自分に気がつくことが何度かありました。

「A選手はアタック決定率が高いが、B選手はそれほど高くないから、A選手に警戒が必要だ。」

しかし、実際の試合ではB選手に多くの得点を奪われることになる。そんな経験もしてきました。こうした経験をたくさんする中で、自分自身に戒めているのはデータはあくまで「過去の記録」であるということです。もし「過去がAだから、未来もAだろう。」という思考に縛られていては本当の勝負所では勝てなくなってしまうと思います。勝負所で最終的に最も大切とされるべきはプレーヤーの直感や判断だと思っています。監督の思考がデータに支配されていたとすれば、試合の最も重要な局面でそれをプレーヤーに押し付けてしまうということが起こってしまうのではないかと思っています。ですので、「過去の記録」から未来がどうなるのだろうかという想像力を持ちながら「今この瞬間」に目を向けてプレーヤーも、そして、監督も創造力を発揮して戦うことが非常に大切だと思っています。また、集計するデータのボリュームや精度、対戦相手との相性、プレーヤーの調子の良し悪しなど、様々な変動要因によって、分析して出される数値には違いが出ることがあります。そのため、統計学的な知識、それを活かす知恵をも身につけていかなければデータ分析という行為は百害あって一利なしといったことになりかねません。

データをうまく活用するという意識を持って、データ分析と向き合う姿勢が大切だと考えています。

私の心残り

また、リーグ期間中の分析作業の大半は自チームというよりは相手チームの分析に多くの時間を割きました。優先順位的にそのようになってしまいましたが、本来であれば自チームの分析にもっと時間をかけて行いたかったという点については正直なところ後悔が残っています。自チームの分析を進める中でもっと自チームの強みや弱みを感覚的にではなく、よりリアルに把握したり、分析内容をプレーヤーへのコーチングに活用したりすることがもっとできたのではないかと思っています。

最後に:アナリストとバレーステーションプロへの感謝

約半年という短い期間の中でデータ分析のズブの素人であった私でも分析の作業をなんとか進めてこられたのは、アナリストの日々の献身的努力(レスのスピードが尋常ではなく早い。そして、丁寧なデータ入力など)と、痒いところにも手が届くバレーステーションプロのおかげであることは間違いありません。チームアナリストとバレーステーションプロには心から感謝しています。本当にありがとうございます。

私の連載『アナリストとバレーステーションプロと私のデータ分析のタビ(今、つけたタイトルです笑)』を読んでくださった方のうち一人でもデータ分析に興味を持っていただくことができれば本当に嬉しく思います。