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データ分析の活かし方。 その2(5/6)

リガーレ仙台の元監督、雑賀雄太さんがデータ分析シートの作成の道のりに関して書いてくださりました。

自身が抽出したい映像だけを編集したり、プレーヤーに共有したいと思ったデータを抽出したりすることができるようになってくると、次にいかにそれらを分かりやすくプレーヤーに伝えられるのかを考えるようになっていきました。どのように表現すれば相手チームの攻撃パターンや傾向をプレーヤーに理解してもらえるのかというアウトプットのフェーズです。

分析シート作成という試練

そこで、まずは相手チームの映像とセットにして、A4一枚で相手チームの全体感が掴めるもの(分析シートなるもの)を作成しようと大きな方針を立てました。プレーヤーが試合直前に観て相手チームとの戦い方を最終確認できるものといったイメージで、作成にとりかかりました。しかし、大きな方針やイメージはあるもの実際にどんな情報をどのように提示すれば良いのかが分からず、なかなか作業が捗りませんでした。ただ、それもそのはず、分析シートなるものをこれまで使用したことはもちろんのこと、見たことすら一度もなかったのです。そして、覚悟を決めて複数チームでのプレー経験があるプレーヤーに全てを曝け出し相談することにしました。するとそのプレーヤーからはデータ分析に関する知識や経験、分析シートをどのように活用していけばいいのかといったアイディアなど、具体的なアドバイスをたくさんしてくれました。こうしてプレーヤーからの貴重なアドバイスのおかげで分析シート作成は大変捗ることとなりました。

ブラッシュアップし続ける分析シート

そして、当初の方針通りになんとかA4シート1枚にまとめることができ、アドバイスをもらったプレーヤーにまずはチェックしてもらうことにしましたが、そこでもさらに多くのアドバイスを受けることとなりました。自分なりに分かりやすく作成したつもりではあったので少し凹みましたが、それらの指摘は非常に的確でした。修正を加える度に分析シートがブラッシュアップされていったと思います。また、全プレーヤーに配布し分析シートを元にミーティングを行なう中でも、様々な要望や意見が出てきて、少しずつ「小さな改善」を繰り返すことで、これまで何度もブラッシュアップされてきました。最終的には、ゲームプランなどが記載されたA4版の「分析シート1」と、バレーステーションから抽出した様々なデータをまとめたA4版数枚分の補助的な位置付けとなる「分析シート2」を試合の約1週間前に共有するというリズムができてきました。

分析シートを起点に対策のリズムができる

さらに、分析シートを全体共有して試合に挑むようになってからは、次のようなリズムができてきました。

1、分析シートを元にしたプレーヤーMTGの実施(試合の約1週間前)2、分析シートとプレーヤーMTGを元にした対策練習の実施(試合の約1週間前〜試合前日)3、分析シートとプレーヤーMTGと対策練習を元にした前日最終MTGの実施(試合前日)

上記のサイクルを回すことで、データ分析だけに頼ることも、プレーヤーの感覚や経験だけに頼ることもなくなりました。データ分析とプレーヤーの感覚・経験をうまく融合させることで、机上の空論とはならずに手応えのある試合準備を進めていくことができるようになっていったように感じています。そして、対策練習で得られた知見も踏まえ、前日最終MTGでチームでの最終確認を行い、チームとしても自信をもって試合に挑むことができるようになっていったように思います。

試合で戦うために不可欠な分析シート

分析シートをチームで共有し、それを土台に試合への準備を進め、実際に試合で戦うというプロセスをリーグ戦を通じ積み重ねてきました。こうした経験を振り返って今気付くことは、分析シートが試合で戦うために不可欠なピースとなっていったということでした。データ分析から得た情報を分析シートにまとめ、それを元にして相手チームの対策練習を行い、試合に挑むことでプレーヤーたちの戦術的思考と戦術遂行能力は高まっていったのではないかと思います。分析シートが試合準備の起点となり、チームが戦う上で必要不可欠なものへとなっていったという実感があります。