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初めてのデータ分析。(3/6)

リガーレ仙台の監督、雑賀雄太さん。初めてのデータ分析の思い・データの使用法に関して書いてくださりました。

ようやくデータ分析のスタートに立つことができたと喜んだのは束の間でした。

アナリストが入力してくれたデータを受け取り、早速バレーステーションのソフトを起動して試合データをインポート、映像データとのリンクも完了しました。

「よし。早速データ分析にとりかかろう。」と思ったのも束の間。

データ分析を通じて自分が具体的に何をしたいのか分かっていないということに気がつきました。

確かに、バレーステーションのソフトにデータと映像を取り込んだことによって各ローテ毎のブレイク率やサイドアウト率、アタックコースといったデータを数値や図にして出力することはできるようになりましたが、それはあくまでデータの整理に過ぎず、現状の把握までが精一杯。それだけで、チーム力の向上や課題の解決に繋がるというイメージを持つことが全くできませんでした。

データの整理はできる状態にはなったけれど、データ分析のレベルにはまるで至っていなかったのです。

データ分析するには『仮説』が必要だった

そこで、そもそもなぜデータ分析が必要だと感じているのか。データ分析を通じて何を達成したいのか。データ分析の目的は何なのか。データ整理とデータ分析の違いは一体何なのか。

こうしたデータの扱いに関する本質的な問いを自分自身に何度も何度も問いかけました。時間はかかりましたが、次第に自分自身の中でデータ整理とデータ分析の間に存在する決定的な違い、データ分析をする上で必要不可欠なものが見えてきました。それは『仮説』でした。自分なりに考え抜いた『仮説』が存在し、そこで初めてその『仮説』を検証するためにデータ分析をするという行為が発生するのだと気がついたのです。

では、皆さんにイメージを持ってもらうためにも、仮説とデータ分析の関係性について具体例を出してみたいと思います。

『仮説の設定>分析>仮説の検証』というサイクルを回す

仮説①の設定:S◯ローテでなかなかサイドアウトがとれていない感覚があるが、実際にはどうだろうか。分析①:各ローテ毎のサイドアウト率を算出する。
仮説①の検証:実際、S◯ローテのサイドアウト率は相対的に低い。

仮説②の設定:S◯ローテのレセプション評価はどのようになっているのだろう(低くなっているのではないだろうか)。
分析②:S◯ローテのレセプション評価を算出する。
仮説②の検証:レセプション評価が悪いわけではない。

仮説③の設定:S◯ローテのセット(トス)配分はどのようになっているのだろうか(1箇所に偏っているのではないだろうか)。
分析③:S◯ローテのセット比率を算出する。
仮説③の検証:セットが極端にレフトサイドに偏っている。

仮説④:レセプションは悪くないのにミドルブロッカーの攻撃が使えていないとはどういうことだろう。ミドルブロッカーの助走の取り方に問題があるのではないだろうか。
分析④:S◯ローテのレセプションアタックの映像集を作成して繰り返し観る。
仮説④の検証:パスが少しでもBパス気味になるとミドルブロッカーの助走が緩んでいる。相手ブロッカーはレフトサイドに絞り込んで、常に2枚以上のブロッカーが綺麗なブロック面を形成している。セッターも完全なAパス以外では、ミドルブロッカーにセットすることがない。

課題解決に向けてのアクション:映像をセッターとミドルブロッカーに共有して、Bパス気味になったときに助走が十分にとれておらず、相手ブロッカーにとっての攻撃選択肢から外されてしまっていることを伝える。Bパスからでもミドルブロッカーの攻撃を仕掛けられるように練習時からBパスからの攻撃機会を多く試行するようにする。

こうして「仮説の設定」「分析」「仮説の検証」というサイクル回していくうちに課題解決に向けての具体的なアクションが生まれてくるということがようやく実感として持てるようになってきました。

ここまで書いてみるとあまりに当たり前のことすぎて、少し恥ずかしく、馬鹿馬鹿しい気もしますが実際にここに至るまで相当の時間がかかりました(笑)。しかし、とても重要なことに気がつけたと思います。

データ整理をして満足するのではなく、データ分析をすることによって自分なりの仮説を検証し、本質的な課題を発見してその課題を解決するためにアクションを起こす。このサイクルを回し続けることによって初めて「データが活きる」のだと思います。