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アナリストを探す旅。 (2/6)

リガーレ仙台の監督、雑賀雄太さんがアナリストをどう探したか・プレー評価の定義づけの重要さに関して書いてくださりました。

リガーレ仙台監督への就任を機に、データ分析の重要性やその価値を理解し始めた私でしたが、何よりもデータ分析に欠かせないアナリストを探す必要がありました。しかし、これまで何の人脈もなかった私にとっては思った以上に大変なことでした。

アナリストを探すタビ

まず、私のような実績も何もないような監督の元で同じ方向性を向かって戦いたいと思ってくれるアナリストがいるのだろうかという想いが浮かびましたが、何もない私にできることはバレーボールに対する情熱をしっかりとぶつけていくことしかないと考えました。私の行動はとてもシンプルでした。アナリストとしてこれから活動していきたいと考えている人材がいないかあらゆるバレーボール関係者の方々にご相談をして、少しでも可能性があれば繋いでもらえないかという話をしていきました。

現実は甘くなく、なかなか具体的な話に繋がることはない状況が続き、そう簡単に共に戦ってくれるアナリストは見つからないだろうと弱気になっていた矢先に、リガーレ仙台でアナリストをやりたいという強い想いを持った学生がいるとある大学の先生からご連絡をいただきました。

そして、早速日程を調整してその学生と会うことになりました。彼の話を聞いていくと彼のバレーボール人生は、リガーレ仙台の影響を強く受けていてチームの力になれるのであれば全力でサポートしたいという話をしてくれました。

素晴らしいアナリストを紹介してくださった大学の先生、そして、チームの力になりたいと行動を起こしてくれたアナリストには本当に感謝の気持ちが湧いてきました。

プレー評価の定義づけにバレーボール観が滲み出る

こうして熱い想いをもった学生アナリストとの出会いを心強く感じつつも、リーグ開幕までには時間がありませんでした。いつでも対面で会うことができる環境にはなく、リモートでのミーティングになることも多々ありましたが、バレーボールに関する雑談や戦術に関するディスカッションを繰り返していくうちに、少しずつお互いのバレーボール観の擦り合わせができていきました。

そして、スカウティングソフトであるバレーステーションのソフト導入にも決裁がおり、実際にバレーステーションを支える段にまで来ることができました。

しかし、実際にバレーステーションを使ってゲーム分析をする前にやるべき重要な準備がありました。それが『プレー評価の定義づけ』です。例えば、レセプションプレーの評価であれば、一般的に「Aパス」「Bパス」「Cパス」…といったように段階的にプレーを評価します。そして、アナリストはプレー映像を見ながら「これはAパスだから”#”だな!」「これはCパスだから”!”だな!」と脳みそを超高速回転させながら判断して、入力作業を行うわけです。

しかし、ここでプレー評価の定義づけに対する認識が監督とアナリストの間で違っていたとしたらどうでしょう。ある一つのレセプションプレーを見て、監督は「Bパス」だと判断し、アナリストは「Aパス」だと判断してしまう状況を想像してみてください。これでは、アナリストが膨大な時間をかけて入力したデータの価値は大きく毀損してしまうでしょう。プレーに対する解釈のズレが監督とアナリストの間にあるまま、データ分析をしたとしてもそのデータから得られるものは少ないでしょう。いえ、もしかすると解釈のズレから誤った戦術を立案してプレーヤーのパフォーマンスを下げることにも繋がりかねません。

こうした解釈のズレを起こさないためにも、私たちは事前にプレー評価の定義づけについては、各プレー毎に厳密な定義をするためにディスカッションを重ねました。ゲーム中に起こり得るプレーを具体的にイメージしながら「こういったケースにこんなプレーがあった場合、どのように評価しますか?」といったようにさまざまなケースを出し合いながら、プレー評価の定義づけをクリアにしていく作業をコツコツと続けていきました。非常に時間のかかる作業でしたが、このプロセスを通じて、互いのバレーボール観をさらに擦り合わせることができたと感じるとともに、彼自身のバレーボール観にも深く触れることができ、そのこと自体も私にとっては刺激となり、学びとなりました。実際のゲームデータ分析に至る前にこのプロセスをアナリストと歩んでこれたことを今では本当に良かったと思っています。(続く)