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雑賀雄太、リガーレ仙台の監督。”データアレルギー”からの克服。(1/6)

2023年4月、リガーレ仙台・新監督に就任した雑賀雄太さん。データ分析を初めて活用する道のりを書いてくださいました。

リガーレ仙台ヘッドコーチの雑賀雄太です。

まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。

“`プレーヤーとしては高校卒業と同時に引退。それから約10年の時を経て、高校教師としてバレー部男子の指導に携わることに。その後は未就学児から高校生まで幅広く育成年代におけるコーチングに従事。2018年には高校教師を辞め、理想とする育成環境を構築すべく起業。バレーアカデミーを設立し、経営とコーチングに没頭。2023年4月、縁あってVリーグDIVISION 2のリガーレ仙台ヘッドコーチに就任。“`

では、自己紹介はこれぐらいにしてここからは私がバレーステーションに出会った経緯に触れていきたいと思います。

*データ分析に対するアレルギー(食わず嫌い)*

そもそも、育成カテゴリでのコーチング経験しかなかった私には分析ソフトを使ってデータ解析して、それをゲームに活用するという経験は皆無でした。強いて言うなら、高校の部活動でコーチングをしている際にマネージャーがとった手書きの記録を見て自チームプレーヤーのアタック効果率をチェックするといった程度の経験しかありませんでした。

ただ一方で、バレーボール専用の分析ソフトが存在することは知っていて、分析結果をリアルタイム活用した全日本女子が躍進し、オリンピックで銅メダルを獲得したというエピソードにも非常に興味を持っていました。

しかし、当時の私にはデータ分析ソフトを活用してコーチングを実践する、戦術を組み立てて戦うといった経験はありませんでした。そうした経験のなさゆえに漠然としたデータ分析ソフトを活用するということに対してアレルギー的な感覚は持っていたかもしれません。

そんな私にもある転機が訪れました。それが、リガーレ仙台ヘッドコーチの打診です。打診を受けた時点で直感的に、長いリーグ戦を戦って勝ち抜くためにはデータ分析を通じたチーム強化の必要性を強く感じたことを覚えています。

リガーレ仙台ヘッドコーチを引き受ける決断をした時点から、すぐにデータ分析ソフトをチーム強化のために活用する方法を模索し始めました。関連する書籍やアナリストが発信するSNS・記事などを読み漁ったり、知り合いの方にアナリストの方を紹介していただいたりもしました。そんなふうにがむしゃらに行動を起こし、しばらくしてから大変幸運なことにバレーボールへの強い情熱をもったアナリスト(以後、Kさん)との出会いがありました。その方はゼロからデータ分析における考え方やノウハウを教えてくれました。ズブの素人である私のあまりに初歩的な質問にも大変丁寧に真摯に答えてくれたのでした。

こうしてKさんと話をしているうちに、私のデータ分析に対する漠然としたアレルギー(今思えばただの食わず嫌いでした。。。)は消えていったのです。

*データは手段。それをどう解釈するのかがキモ*

「データは冷たい。データがなくても試合を見れば分かる。データは・・・。」

データ分析に対して一種アレルギー的な感覚をもっていた私は正直こんなネガティブなイメージ(言い訳)を少なからず持っていたように思います。

しかし、実際にKさんと会話を重ねるうちに「データ」に対する認識はみるみる変わっていきました。正直、以前の私のアナリストに対するイメージといえば極端に言うならば「データがすべてだと思っている人」みたいな感じでしたが、彼は良い意味でそんなイメージを完全に覆してくれました。

「データはデータ。分析して出てきたデータから何を読み取ろうとするのか。どんな解釈ができるのか。それが問題である。」

こんな考えをお持ちの方でした。

データ分析の専門家であるアナリストは「データをあくまでバレーボール理解・解釈のための手段として捉え、より良いバレーボールを実現していくために、データを紐解きどんな解釈ができるのかを日夜追求している研究者」なのだと理解しました。

Kさんとの対話からデータ分析の本質に気づき始めてからは自分の中でデータ分析に対する認識が完全に変わりました。そして、私はデータを手段として、より良いコーチングの実践、さらには戦術立案などに活かしていこうと想いを新たにしたのです。(続く)