2022年、1部昇格を果たした慶應義塾大学男子バレーボール部。
今回は厚かましくも練習にお邪魔し、アナリストである立川貴一さんにお話をお伺いしました。
高校生までバレー部でプレイヤーだった立川くん。
アナリストへの転向理由は、まさかのあの本‥!?
「 “マネーボール“という本を高校一年生の時に読んだのですが、お金が無く、弱小球団だったチームがデータの力で勝っていくストーリーが面白かったんです!
バレーボールのアナリストって、何をするのか具体的には何も知らなかったんですが、大学生活で何か打ち込みたいという気持ちがあったので、アナリストとしてバレー部に入部しました。
元々野球が好きで、野球のデータ分析の勉強をしていたこともあり、プロのアナリストの方と関わる機会がありました。
野球は機械を使ってデータ収集をしますが、バレーボールは全て手動で入力しなければいけないことに驚きましたね。人の目で見てデータを取るということに、最初はとても違和感があって‥‥。
だってそれだとパスの評価も僕の主観になってしまうじゃないですか。「これはAバスだと思うけど、他の人が判断してもこれはAパスなのか?」という疑問を持ちながらデータを打っていました。
その僕の主観が蓄積されて、最後にはチーム全体のデータとなるので、かなり責任が大きい作業です。“本当にこれで良いのかな?“と戸惑いながらのスタートでした。」
数字からストーリーを紐解く
「 “何故この数字が出てるのか” を考えるようにしています。
例えば、対戦相手のある選手のスパイクが決まっている時、その理由を探してみるんですよ。
その理由が、“セッターのトス配分がとても良いから、ブロックが間に合っていない” という場合であれば、1試合を通じてセッターのトス配分に戦略や意図があるはずです。
同じ数字でも理由によって見え方が全然違うし、評価を誤ると別の解釈になってしまいます。」
打率2割9分9厘の打者のモチベーション
「 うちはサーブレシーブが良いチームではないです。
であれば、そこで勝負するよりも、“Cパスになった時のハイセットをどれだけ打ち切れるか”というハイセットに対するアプローチを見直したいです。
アナリストとしては、その場合の目標値を選手に意識させたいんですよね。
例えば野球だと、打者の打率は“3割”というのが一つの基準としてありますよね。
実は、2割9分9厘の打者の成績を研究したデータがあるんです。その状況の選手が打席に立つ時って、モチベーションがとても高いので良い成績が出やすいらしいんですよ。3割という数字を追っているから、その場面で成果が出やすいんです。
だから、人って数字を意識すると、力を発揮できるはずなんですよね。
であれば、“ハイセットの時に何パーセント決めたら合格!”というのを示してあげられたら、打者のケースと同じように力が発揮できるんじゃないかなって。
バレーステーションは、出せるデータの自由度がとても高いです。
自分で関数を打ち込むことができて、出したいデータが出せる。
フォーマットを気にしなくても良いし、ちょっと複雑なデータもエクセルを経由せず済みます。
学生って部活以外にも時間を割かなければいけない事が多くて‥。アナリストとしての仕事が時間短縮できるというのは大きなメリットだと感じています。
一つの作業にかかる時間が短縮できれば、効果率の指標の見直しが更に出来ると思うんですよね。
例えばこの2つの場面、
・自チームがサーブを打ち、相手チームをCパスにした
・相手チームのサーブを自チームがAパスで返し、スパイクを打った
それぞれの場面で、得点に結びつく確率はどれくらいか。
その得点期待値を出して、比べることが出来れば、より正確に選手の貢献度が出せると思います。
そうすれば、スパイクが得意な選手、レシーブが得意な選手がいた時、試合の局面でどちらの選手を起用すべきか迷わないし、勝つためにはどのプレーをより練習したら良いのか、日頃の練習を効果的に行うことが出来るはずです。
正確な評価が出来る指標を作って行きたいですね。
細かいプレーの技術に関しては僕よりも選手の方が詳しいです。僕は、“じゃあどうしたら勝利に繋がるのか” を一緒に考える手助けが出来れば良いなと思います。」
1部に返り咲いた慶應。今年はどんなシーズンとなるのかとても楽しみです。